2017.04.01
第10回 担当 山上 安見子

至上の神の命令一下して「詩人」がこの退屈な世に生た時、生んだ母親は喫驚仰天、拳を固め
悪口雑言、哀れとおぼす「神」さへ怨んだ。

—シャルル・ボードレール「悪の華」
詩人、評論家 1821-1867(享年46歳)
生前発表した唯一の詩集『悪の華』の退廃的、耽美的、背教的な内容のため発禁処分となるが、後の世代のランボー、ヴェルレーヌなどに絶大な影響を与え「近代詩の父」と呼ばれる。
アンドレ・ジッドの「狭き門」で、ジッドはヒロインのアリサに『ボードレールのソネット数編のためなら、ユゴーの全作品を犠牲にしてもかまわない』と、言わせている。それまで厳格なプロテスタントであったアリサが、ボードレールの背教的な詩に惑溺していく様は、二人の実らぬ恋を予感させ痛々しい。
俺は夢みた、十字軍、話にも聞かぬ探検旅行、歴史を持たぬ共和国、息づまる宗教戦争、風俗の革命、移動する種族と大陸。俺はあらゆる妖術を信じていた。

ーアルチュール・ランボオ「地獄の季節」
詩人、貿易商人 1854— 1891(享年36歳)
象徴主義の代表的な詩人。主な作品に散文詩集『地獄の季節』『イリュミナシオン』など。
早熟の天才詩人、しかも美少年。詩人のヴェルレーヌの恋人だったが、拳銃を発砲され破局。その後二年あまり詩作に集中し、二十歳を過ぎるとあっさりと詩を捨て、アフリカを放浪する。ボヘミアンなランボオにとって、ヴェルレーヌの束縛や嫉妬はさぞかし鬱陶しかっただろう。
同じく早熟の天才だった16歳の中原中也はランボオに憧れた。あの有名な写真はどこかランボオを意識している。


担当者プロフィール
山上安見子(やまのうえ やすみこ)
1956年7月12日生まれ。
青山学院文学部卒 広島大学法学部卒
主な著書「赫い月」「ベルオンム」 「パンティの干してある家」
リトルがリヴァー社HP連載「ブリザードの哭く夜に」「ピアノ色の猫」「利休椿」
2017年7月 大地の神話出版予定