2017.03.15
第9回 担当 山上 安見子

それはひどく厭な夢のなかの出来事に似てゐた。
—原民喜「夏の花」
とても無口な人で、知人の家を訪ねても妻の背の後ろから小さな声で用事を伝えていたという。
前年に妻を失くし、八月六日生家のある広島市幟町で被爆。その夜を現在の縮景園で過ごし、翌夜を広島東照宮で瀕死の被爆者たちと共に過ごす。
「コハ今後生キノビテコノ有様ヲツタヘヨト天ノ命ナランカ」と、見聞きした原爆の惨状を記した手帳を元に詩集「夏の花」を記す。
上京するも、体調不良に悩まされ1951年鉄道自殺
希望 それはこころ
あふれやまぬ ひとのいのち
よみがえる草木 朝日とともに
明日へとこころは かがやいて

—谷川俊太郎「HOPE」
日本を代表する詩人の一人。十代で処女詩集「二十億光年の孤独」にてデビュー。その作品は各国語に訳され、世界中に多くの読者を持つ。詩、絵本、童話、翻訳などその著作は多岐にわたり、各地で活発に朗読会を行っている。
東直子、筧和歌子、服部みれいなど若い世代の詩人とも幅広く交流を持っている。
この詩はジャズピアニスト秋吉俊子のJAZZ組曲「ヒロシマ〜そして終焉から」の第三楽章「HOPE」に谷川が歌詞をつけたもの。秋吉の長女満ちるがボーカルをつとめている。

担当者プロフィール
山上安見子(やまのうえ やすみこ)
1956年7月12日生まれ。
青山学院文学部卒 広島大学法学部卒
主な著書「赫い月」「ベルオンム」 「パンティの干してある家」
リトルがリヴァー社HP連載「ブリザードの哭く夜に」「ピアノ色の猫」「利休椿」
2017年7月 大地の神話出版予定