2016.12.15
第3回 担当 宇田川森和
現代詩人の守備範囲を昭和初期から敷衍し、代表的詩人の作品から「新しいことば」探しをしてみる。

疲れた時代の、疲れてはてた心よ、さあ
—W・B・イェイツ「薄明かりの中へ」


W・B・イェイツ(1865〜1939年)
主な詩集「アシーンの放浪」「葦間の風」「塔」「ケルトの薄明」
わたしがイェイツに遭遇したのは、伊藤整の「雪明かりの路」の冒頭詩に、イェイツ作品が紹介されていたからである。
むろん、当時はその詩人の名前も作品も読んだことがなかったが、「アイルランド出身」の記憶が残った。なぜならば、例のジョイスの「ダブリン」とつながったからである。英国のお隣であるが、属国化を拒み、激しく抵抗した歴史がある。北国特有の粘りや、精神的タフさが、これを築いたはずだ。
そこで知った、イェイツ作品には、北アイルランドの近く、「スライゴ」という港町に材を得た作品が多い。「極寒、不毛、荒波など」風土として最悪の条件下で、イェイツは、ケルト神話や、妖精たちの伝承を書き続けた。

君は一体誰が一番好きなんだ、え、謎のような男よ?
—ボードレール「パリの憂鬱」収録「異邦人」


ボードレール(1821〜1867年)
「悪の華」1857年「パリの憂鬱」1869年、その他の散文、詩編、書簡等、多数。
多くの詩と散文と書簡を遺したボードレールは、死後すぐに編纂された「決定版」は、編集が杜撰で、「パリの憂鬱」は入っていなかった。その後、改訂を重ねて収録した1931年刊の「ブレイアド版」と称されるもの。以後、未発表作品が発見されるたびに、版を重ねて、内容的充実を見た。日本語版は人文書院による福永武彦編集「ボードレール全集」全五巻をテキストとした。
福永さんは、ボードレール像について、かれは、「その精神が、子供の頃から物思いに沈んだ人たちのことを僕は言いたいのである。常に、行為と意図に於いて、二重である。常に一は他をそこない、一は他の部分を侵食する。」とボードレール自身の述懐を紹介しているが、これが二重人、二重人格の意味を端的に示している。

担当者プロフィール
宇田川森和(うたがわもりかず)
1948年、山形県酒田市出身。関西大学卒。現在リトル・ガリヴァー社編集人。
20代より、小説・詩集を刊行し、本格的に刊行したのが、エッセイ「夢で会いましょう」(1991年、編集工房ノア)
主な著作「はいばらのそら ケルンのそら」(1987年、同)
詩集「レクエイム」ほか、数冊
電子版「炎の十字架」「ビィーナスの涙」「華の乱 小説通天閣」「天神橋六丁目界隈」ほか