尹 達 世(ユン・ダルセ)
1945年、愛媛県内子町生まれ
同志社大学文学部社会学科卒
現在、姫路獨協大学非常勤講師、大阪経済法科大学客員研究員
兵庫津・朝鮮通信使を知る会・代表幹事
神戸市長田区在住
【著作】
『四百年の長い道』リーブル出版
『兵庫のなかの朝鮮』(共著)明石書店
『行基と渡来人文化』(共著)たる出版
『近代の朝鮮と兵庫』(共著)明石書店
『デカンショのまちのアリラン』(共著)神戸新聞総合出版センター
『資料集・日本の新聞が報道した済州道』(共訳)済州史定立事業推進協議会

このたびは、「四百年の長い道」〈続編〉を脱稿し、間もなく書籍として完成します。
〈正編〉として、同一名称の著書を以前出されていますが、〈続編〉も同一名としたのは、なにかしらの連続性があるということですか。
前作は取材対象地域が四国、九州、中国の各地方と兵庫県でした。しかし、秀吉の朝鮮侵略(壬辰倭乱)の痕跡は日本全国に拡がっているという意味で、その続きとして兵庫県から以東の地域を対象にしたものですから「続編」とした次第です。


この書の副題が「朝鮮侵略の痕跡について」と歴史的史実をふまえて、「侵略」ということばに変わった。これは読者への強いメッセージと映りますが。
この「痕跡」の取材を始めたのは20数年前からで、当時はまだ「朝鮮出兵」というのが一般的で、「出兵」という語句はそれほど違和感もなかったのです。しかしこの間、「出兵」ではなく、「侵略」という概念の方が妥当ということで教科書でも使われるようになりました。つまり「出兵」から「侵略」に変えたのは、年配の読者に対するメッセージという意味もありますが、私自身の反省をも込めたものです。


最近のニュースとして、皇室図書館の関連で、朝鮮からの図書の返還を政府が決めたとありますが、その中身はほんの一部だとする専門家の声も聞きます。日本に持ち込まれた朝鮮の書物や宝物はどのくらいにのぼり、かつ現在、所在はどうなっているのでしょうか。
アメリカにある浮世絵などが返還されたという例もありますので、朝鮮固有の文化的遺産の返還は声を大にして主張すべきでしょう。
聞くところによりますと、韓国文化財庁が把握しているものだけでも宮内庁、東京国立博物館、国会図書館、大阪府立図書館をはじめとして各大学、各寺院、そして個人所有など、約250カ所に6万点以上の朝鮮文化財があるということです。この中には正当に搬出されたものも若干あるでしょうが、これは植民地時代に搬出(略奪)されたものであり、壬辰倭乱時のものを含めるとさらに多くなるのではないでしょうか。略奪由来がはっきりしているものについては先進国日本、民主国家たる日本はすすんで返還に尽力すべきではないかと思います。


本書のポイントになる時代は秀吉の朝鮮侵略が始まりなのでしょうが、それ以前の朝鮮と日本の関係はどうだったのでしょうか。
奈良時代の、遣隋使、遣唐使など、半島を越えて中国と日本の関係に終始しますが、半島の諸国とも交易など、大いに関係があったと思いますが。
半島と列島は最も近い隣地でありましたので、奈良時代以前の古くから活発な交流、そして列島から先進文化、技術の導入があったことはよく知られていると思います。ところが教科書では遣隋使、遣唐使の記述はありますが、遣新羅使にはほとんど触れられていません。遣隋使は5回、遣唐使は15回派遣されていますが、遣新羅使は28回にものぼるのに、です。遣唐使廃止とともに日本と半島、大陸との交流は希薄になりますが、室町時代になって朝鮮王朝との交流が通信使として復活しました。ところがその友好関係を破壊したのが、秀吉の朝鮮侵略だったのです。


最近、日本人のルーツとして、そのDNAから調査した科学者がいました。
日本人の成り立ちは、三つの方角から移住してきたと推理されている。
蝦夷の東北、北海道エリア、東南アジアなどの海を渡ってきた人種、そして朝鮮半島からの人種。
こうなってくると、半島の人たちと日本人は兄弟というより、同じNDAをもつ人種となりますね。
日本列島はアジア大陸の東端に位置していますから、北から、南から、西から多くの民族が日本列島に辿りつきました。列島から東に行くにはあまりにも遠いので、列島にとどまり、融合していったと思われます。日本はアジア人種の雑種だと思います。また韓国人も同様です。今後も国際化の流れで加速されるのではないでしょうか。


最後に尹達世さんがこれから手がけてみたいテーマやその展望をお聞かせ下さい。
いまのところ、ここで特に発表できるものはありません。ただ今回で「四百年の長い道」を2冊刊行することになりましたが、紙数の関係でまだ紹介できなかったものがたくさんありますので、もし今回の本が受け入れられるならば、引き続き整理してみようかとも思っています。