外岡立人(とのおか たつひと)
1944年、北海道生まれ。
北海道大学医学部卒。
二年間、ドイツ・マックス・プランク免疫生物学研究所に留学。小樽病院などで28年間、小児科医として勤務。08年8月まで小樽市保健所長。新型肺炎(SARS)やノロウィルスなどの感染症の情報を開示。「鳥および新型インフルエンザ海外直近情報」は、鳥インフルエンザに関する、全国の行政、医療関係者への重要な情報源として評価されている。
1994年、北海道文学賞受賞、1997年、さきがけ文学賞受賞、2002年、関西文学選奨受賞。
[主な著書]
「新型インフルエンザ・クライシス」(岩波書店)、「メダルと墓標」(講談社)、「顔」(澪標出版)、「美しい顔」(講談社)他。



まず、今回の新刊「パンデミック追跡者」という作品は、主人公である遠田医師が香港で流行する謎の異形肺炎の調査に向かうというくだりから始まっています。そして、人間に感染し、いずれパンデミック(爆発的感染)現象の予兆と書かれています。
新型インフルエンザのワクチンは、これらの新型には効かないということが背景にあるのですか。
実際にパンデミックが発生してから、それを引き起こしているウイルスに対するワクチンを作成することになりますが、作成したワクチンがどこまで効果があるかは、投与してみなくては分からないという不安定要素があります。また実際に製造されるまで数ヶ月かかりますから、それまでの間、どのようにウイルスの拡大を抑えるかも重要な問題となります。


いま、映画「感染列島」という映画が放映され、これもまたパンデミックによる人類の危機というテーマにあるようです。
果たして、バンデミックは起きうるものなのでしょうか。だとすれば、医学的な防衛手段があるのか、たいへん気になります。
インフルエンザのパンデミックは周期的に起きています。歴史的にみると、一世紀に3〜4回発生しています。最後に発生したパンデミックは、1968年の香港インフルエンザですから、既に40年は経過しています。専門家の間では、そろそろ発生するのではないかと10年程前から言われています。医学的防衛手段はこの数年間に急速に開発されてきています。それは第二巻と三巻で示されます。


先生が発信される「鳥及び新型インフルエンザ海外直近情報集」(http://homepage3.nifty.com/sank/)では、最新の海外情報を発信し、警戒的なシグナルになっている。このサイトの閲覧者も爆発的。こうなると、現実と小説の境目みたいなものが分からなくなりますね。
この小説のモデルは自分自身とも言えますから、フィクション部分の基盤には現実の状況が生かされています。


現役の医師である先生がこの小説を書き下ろした、本当の目的はどこにありますか。これは第一巻とあるとおり、今後引き続いて続刊を書き下ろされる。果たして、小説ではどこに行く着くのか、興味深いですね。
パンデミックはいつか起きます。その水面下では色々な事象が発生しています。第二巻以降は、よりフィクション性が強くなりますが、個々の事象の多くは事実に基づいています。事実の連なりの先にパンデミックがあるとしたなら、この小説の終わりは、相当先になるのかも、または直ぐになるのかも知れません。最低三巻までは続く予定です。


必ずしもそうではないでしょうが、医師として得られる情報が、小説的題材になりうるということは、普通の人では書けないテーマとなります。
そのような題材はいくでもある。ドラマや映画でも医療的背景のものがけっこうあります。持ちネタみたいな題材はまだまだおありなのでしょうか。
私は長い間病院で多くの子供達を診てきましたし、その後保健行政の場で、多くの矛盾した現実の中で業務も体験してきています。小説の題材は無数にあります。


最後に先生が小説を書くと決めた、なにか特別な理由というか、きっかけがあったのでしょうか。
40代前半までは、医学論文という手段で医学的問題点を学会に提示することで、自分の医師としてのエネルギーの昇華を続けてきました。しかし無数の論文を書いても、自分の感性から発せられる医師としての主張は発露されないことを知ってから、それを小説という形態で社会に提示してみようと考えたわけです。40代後半から小説を書き出し、いくつか出版しましたが、仕事が忙しく、ここ数年間中断していました。しかし、最近新型インフルエンザの啓発のために小説を書きたくなり、今回、その第1作をまとめました。


お忙しい中、ありがとうございました。