01回 玉木文憲さん

02回 トーマス青木さん

03回 支刈誠也さん

05回 喜多圭介さん

06回 福堀武彦さん

07回 田野倉悟さん

09回 あまのしげさん

11回 柴崎昭雄さん

12回 大山真善美さん

13回 外岡立人さん

14回 木村司さん

15回 浜野伸二郎さん

16回 泉忠司さん

17回 阿波野ひみ子さん

18回 松浦徹郎さん

20回 玉木文憲さん

22回 濱口隆義さん

23回 佐藤ミツアキさん

24回 篠永哲一さん

25回 佐藤正子さん

26回 尹 達 世さん

27回 石黒敏明さん

28回 緋野 晴子さん

29回 菅原勇太さん

30回 山田博泰さん

31回 万彩タモンさん

32回 津田美智子さん

33回 物河 昭さん

34回 武田久生さん

35回 菅原やすのりさん

36回 朝あさおさん

37回 菅野正人さん

38回 支刈誠也さん

39回 丸子睦美さん

40回 山上安見子さん

41回 久保田隼斗さん

42回 坂東重明さん

43回 いづみかほるさん

44回 下田喜久美さん

45回 山蔭ヒラクさん

46回 ジョージ土井さん

47回 丸子睦美さん

48回 高橋てつじろうさん

49回 松本のぼるさん

50回 宇田川森和さん

51回 酒匂つよしさん

53回 加藤克信さん

54回 都環咲耶子さん

55回 横山ひろしさん

56回 三島慶子さん

57回 久保田隼斗さん

58回 平藤清刀さん

59回 長倉輝明さん
NEW(2019/02/20)

障害者である玉木さんは一代奮起し自分の生まれ育ったことをエッセイにまとめ始めた。
それからすでに四冊目を数える。
今回は障害を持っていながら、世界中を旅するご自身の体験と同じ仲間たちに向けた旅のアドバイスを描いた。
その執筆のきっかけなどをお訊きしてみました。
玉木 文憲(たまき ふみのり)
1949年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。バリアフリージャーナリスト。
53年、父子家庭突入。64年、父死去。孤児となり、東京都小平市のサレジオ学園へ。
69年、西武百貨店入社。
79年、副腎白質ジストロフィー発病。85年、大阪に転勤。
91年、創価大学通信教育部経済学部卒業。95年西武百貨店退社。同年、有限会社ボールズ設立。
97年、病状悪化、寝たきり生活に突入も、一年後に再起。
98年、FFC普及会、東京ライターズバンク、東京スピーカーズクラブ会員
妻、一姫二太郎の四人家族。
http://www12.canvas.ne.jp/tamaki/



玉木さんにとって今回四冊目の著作となりますが、出された著作への苦労談はありますか?
書き上げて思っていることは、まず達成感がないということですね。まだ自分の書きたいことが書けてない。ひまを見ては書くというスタンスで書いているのですが、これは自分にとって集中できるときのこと。家族がいるときは雑音が多くて書けないんです。
ものを書くというのは頭の中で自分の世界を描いて、それを文字にするという作業。だから、自分だけの時間にひたるということが、最低限必要なんです。

なかなか時間がとれないということですか。
ぼくの場合は、こういう体でもあり、自由にどこにでも行くというわけにはいかず、限られた場所と時間に制約されます。

すると、書いているときは時間を忘れて書いている。
そうですね。書いているとけっこう一気にいきます。五時間とか過ぎて、「もうこんな時間?」というときが多いです。

玉木さんの文章は、読みやすく、分かりやすいのですが、これは意識してそうされている。
いろいろの人の意見を聞くと、ぼくの文章は、読んでいる人にとって、なにか直接、語りかけているように聞こえるらしいのです。読者の息使いに無理がかからない。だから、「だ」とか「である」という調子の文章は書かないようにしているんです。

世の著名エッセイストのものはなんかしっかりテーマを持ち、読ませるものをもっている。
それが文章力の「深さ」のように伝わる。玉木さんの読ませるものって。
昔、小林秀雄さんなんかを読んでいると、けっこう堅いし、論文みたいなところがあるけど、なにしろ美しい。ぼくが読んだ中では影響のあった人です。けれど小林秀雄さんのようなエッセイを書くのはわたしの柄ではないかも知れません。

エッセイのおもしろさの一つに知的冒険のような、未知の世界を探求するというねらいの本もある。
しかし、玉木さんの場合は、日常的なものをさりげなく拾って、それを文章にされている。
まったくその通りです。柳田邦男さんみたいな文章を書きたいとは思うけど、どうもぼくには向いていません。すると、自分にとってもっともふさわしい世界は、自分が触れている日常以外にないと思えるわけです。そこから得られる共感とか感動です。ぼくのスタイルというとおおげさですけど、物書きという人種にはちょっと鼻持ちならないような、上から下を見下ろすという匂いがある。でも、ぼくは絶対、それをしたくない。
人前で話をするときも、目線はかならず、その人と同じでありたいと思ってしゃべっています。

これから玉木さんが目指すものというか、テーマのようなものは。
それを一言でいうならば、やっぱり玉木の世界みたいなものを作っていきたいということです。団塊の世代に生まれて育ってきた、なおかつこれまでの自分には考えることもできなかった身体障害を持つ人間の、生き様みたいものですね。
読みやすさ、分かり易さという平易な文章の中で、生きざまという深遠な問題をさりげなく表現したいとは思っています。なにも難しく書くことだけが表現方法ではないということです。椎名誠さんにはそれを強く感じましたね。さりげなく書いているようで、じつは深い。もっと彼の考えが知りたくて、講演会の追っかけをやっちゃったくらいです。

その意味では、玉木さんのスタイルというのが見えてきたということですか。
それはあります。ただ、読者からすると、手っ取り早くそれを読みたいと思うから、つい、「どの本がお勧めですか?」なんて質問が飛んできますね。どれも同じテーマじゃないから「お好きな本を」とお答えしています。
ぼくが一番読んでほしい人というのは障害者です。夢と希望に満ちた、強い人生を生きてもらいたい。だけどなかなか読んでくれない。この人たちにどうやって読んでもらうかですね。値段を安くすることか、図書館に置いてもらうことか。それとも本というスタイルを離れるか。

これから書きたいテーマはありますか?
それは私たち人類にとって最大の脅威である環境汚染の問題に尽きます。私たち20世紀に生まれ育った人間が、破壊し続けてきた美しい自然を元に戻すことは、私たちの使命です。まだまだ勉強不足ですが、いつかは絶対に書き上げてみたい。「私は可哀想な障害者です」といった福祉の問題の壁を破ること。私の書いた本が、書店で福祉のコーナーに並んでいるだけで、胸が押し潰されそうになります。
20世紀に生きた一人の人間としての生きた証を示しうるようなものを書きたいのですが、自分の枠をまだ決めたくありませんね。これからどんどん玉木の世界は、広がり続けるように思います。