第7回 宇田川森和さん

宇田川森和(うたがわ・もりかず)
関西大学法学部卒、地元の地方新聞記者を経て、フリージャーナリスト。
その後、コンサル会社をへて、出版社起業。
文筆歴は、二十代前半、芥川賞作家宮本輝さんの所属する同人誌「わが仲間」の一員。
当時の「文学界」「群像」「新潮」などの新人賞に応募。いずれも二次予選通過止まり。集英社公募の文学賞では、最終候補になる。
現在、日本文藝家協会、日本歴史時代作家協会
主な著作
「夢であいましょう」「はいばらの空 ケルンの空」「北の大地に生きる」(片山通夫氏と共著) 以下詩集「レクエイム」「異郷」
電子書籍「ビィーナスの涙」「炎の十字架」「華の乱 小説通天閣」「天神橋筋六丁目界隈」「ダイモスの反乱」ほか。



まずは新刊「銀漠の海」刊行、おめでとうございます。
このご本は、タイムトラベラーの冒険譚とお聞きしてますが。

はい。執筆には約三年かかりました。当初はもっと早く完成できたのですが、途中いろいろ寄り道しているうちに、時間がかかりました。

タイトルがユニークというか、珍しい造語ですね。

ええ、イメージですから、時空をさまようイメージはどんなだろうと思って。苦心しました。


最近、小説はもとより映画やテレビドラマにこういった作品が多い気がします。その中には、タイムトラベラーものも。
こういった現実にない世界を描くのは100%著者の想像力と思いますが。

昔「海底二十万里の旅」とか冒険譚がはやりました。なぜそういうものがはやったのだろうと、考えてみると、そういえばみんな「鉄腕アトム」に憧れていました。


ということは、手塚先生の漫画がアイデアの原点ですか。

必ずしもそうではないのですが、自分の中になにか引き出しに隠れているかと、細々と掃除をしていたら、原作のようなヒントがありました。それに手を加えていきました。
よく、「書き下ろし」作品とかいいまずか、そう簡単に書き下ろしはできません。元々、著者の中にアイデアはあった。それを活字化するには別の要因があります。
肩を推されるとかいいますが、推す事件とか、推す人がいると、不思議と書けるもので、漠然となにもなしの状態で書くのは難しいです。
小説は、作者の「遊び」の部分が多く、遊ぶ心、気持ちなくしては書けません。


最新の作「銀漠の海」についてお聞きします。この作品のあらすじは。

これは、令和から大正時代までのタイムトラベラーの物語です。時空の移動を通じて、主人公赤人の正体が明らかになります。同時に、時代時代のもつ特性や事件などが、それぞれの文化的価値として示されますね。とくに、大正時代は、デモクラシーとか、大正モダンといわれるなかで、関東大震災という甚大な被害を受けますし、それから間もなく、自由恋愛を標榜した伊藤野枝さんと、大杉栄さんの惨殺事件がありました。そこに、令和の赤人がどうかかわるか、小説的想像力をもって、世界を描いています。


これは宇田川さんの新しいジャンルへの挑戦でしょうか。

いや、そうではありません。推理小説、SF小説など、すべてが恋愛小説とはかぎりません。いろいろジャンルに興味はあります。


最後に、これからの目標や、手がけたい作品はどのジャンルになりますか。

古代小説ですね。これは、亡くなられた黒岩重吾先生に刺激されたのと、氏のように生まれとか、居住地に関係します。
一時、奈良の田舎に住み、なにげなくドラブ見学してました。そこへ例の談山神社とか、山部赤人のお墓とか、すぐ近くに、古代史の匂いがしてました。それからですね、聖徳太子廟とか、歴代天皇陵とか、歴史的事件の人物・場所とか、いろいろ取材しました。
最終的に、第一歩は、「物部守屋」ですね。ということは、蘇我一族、わけても馬子の存在がキーポイントです。四天王寺には、物部守屋の弔い神社があります。八尾市には、蘇我と物部の合戦のあとがあり、大将軍寺には守屋の首洗い池とか、間一髪、難を逃れた少年太子を助けた大樹の存在とか、いろいろ歩いているうちに発見があります。
楽しみにしておいてください。



長時間、ありがとうございました。

(進行・聞き手:小岩井慶子) 公開日2020.04.05