━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ガリヴァーの森      第156号 (2012/1/5)           総合出版 リトル・ガリヴァー社            http://www.l-gulliver.com/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆◇Contents◇◆================================================== ●社長・富樫庸よりご挨拶 ●市源小次郎の岡目八目 ●福堀武彦の「日本人から見た中国諸事情」 ●Web連載 更新のお知らせ ●駆け込み寺 (156) ●今週のおすすめ 新刊案内 ●編集後記 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆◇ 社長・富樫庸よりご挨拶 ◇◆ ------------------------------------------------------------------ たまたま新年早々「箱根駅伝」の中継を見ていた。どの大学の応援という ことはないが、追いつ追われる中での、タスキを繋ぐというのは、個人選 のマラソンとは違う。そのタスキを渡す寸前まで意識は強くあり、そのと たんに倒れるシーンがたびたびあった。死力を尽くす、チームのためにと いう強い意識を見た。長距離経験をもつ私は、ラストの数百メートルで、 「意識が飛ぶ」という感覚はよく分かる。人としての驚異的行動は、意識 よりも体が自我を持っているということである。 本年も「ガリヴァーの森」のご愛読をよろしくお願いします。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆◇ 市源小次郎の岡目八目 ◇◆ ------------------------------------------------------------------ 「年の初めの例とて」を口ずさみながら、日本に思いを馳せていて、個人 個人はともかく、日本の国そのものに今年が昇竜の年となる要因が見つか らないことに、少し気落ちしている。 年末から、山本五十六と並んで「海軍の(良識派)3羽烏」と呼ばれ、日 独伊三国同盟阻止に身体を張った米内光政(最後の海軍大臣、海軍の葬儀 委員長とも呼ばれる)と井上成美(最後の海軍大将)関連の本を読みなお していて、鳩山一郎の「統帥権干犯問題」に代表される「政党間の形振り かまわぬ政権争い」、すなわち、「政党のための政治」に付け込んだ陸軍 による、「陸軍のための政治」が、対米開戦の遠因であることに気付いた。 民主党が政権を握り、「2大政党時代」などと言われているが、アメリカ で2大政党が成り立っているのは、「成熟した国民」があるからだ。 日本に「成熟した国民」の数が、ごく少ないのは、2年前半ほど前に、 「コンクリートから人間へ」などという、言語明瞭、意味不明のアナログ 的、情緒的なモットーを掲げ、高速道路無料化、高校無料化、子供手当、 消費税の非導入など、(財源がないという意味で)できもしない、あるい は、するべきではない、得票が目的だけのマニフェストを掲げた民主党が、 大勝利を収めたことで証明されている。 もっと呆れたのは、日本国民が、できもしない、するべきでないマニフェ ストだったことに目覚め、民主党離れをしているのにも気づかず、荒唐無 稽なマニフェストに固執するばかりに、八ツ場ダムの建設に反対し、消費 税の増額に反対し、政党補助金目当てで新党結成した(1月15日までに 登録しないと貰えない)、元民主党議員の「鈍感さ」と「利己主義」だ。 日米開戦の遠因は、「成熟した国民」がいないのをいいことに、「政党の ための政治」をしようとした政治家が跋扈したことだ。「国民のための政 治」を考えない利己的な政治家など、百害あって一利なしだ。 対米開戦の遠因のもう一つに、軍人のドイツカブレがある。 ヒトラーの『我が闘争(マイン・カンプ)』は、日本軍人によく読まれた が、日本語の訳本では、「日本人は想像力のない劣った民族だが、小器用 でドイツ人が手足として使うには便利だ」という箇所が省かれていた。 「もし、この文章が省かれていなければ、日独伊三国同盟はなかったかも」 ……物書きの端くれとして、心したいものだ。 それはともかく、富樫社長は、新年の挨拶で、「2012年、きっとなにかが 成就するような予感があります。それにむかってまっしぐら、突き進めて 参ります。どうぞ、注意深く見守っていてください。今年は、“やるぞ”」 と宣言している。 リトル・ガリヴァー社、昇竜の年となるよう微力を尽くすつもりだ。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆◇福堀武彦の「日本人から見た中国諸事情」42回 ◇◆ ------------------------------------------------------------------  現在、中国の動きは私たち日本が体験し、変化してきた道よりも大きな 違いがあります。まずその変化の速度が全く違います。  中国の場合、その国土の大きさの中で、それが地域によって一様ではな く、異なる場所(風土・環境が異なる地域)でそれぞれが異なった速度で 変化しています。たとえば同じ商品を販売していてもそれぞれの地域性に より仕事の進め方も一様でなく、その変化の中でそれぞれの地域の人たち の心も変化してゆきます。  この人心の動きの中で、中国自身も大きく揺れています。共産党の権力 構造が変わらなくてもそこで行われる実際の動きは絶えず変化してゆきま す。共産党も権力維持のためにその統治の方法にも柔軟性を持たせながら 絶え間なく変化させています。そしてその考え方も地域によって状況が異 なるので党としての一貫性を持たせながらも地域、地方によって硬軟を使 い分けているのです。  中国共産党は2011年に党創立90周年になり、党員は2010年末 現在で約8027万人に達し、(新中国成立時448.8万人)女性党員は 22.5%、農民が30.4%、企業管理者・専門職が22.9%、労働 者が8.7%、高齢者が18.5%との発表があったが、労農中心の党の 割には意外と勤労者が少なく、且つ高学歴者が多い。経済界の有名人も多 くなり、考え方も党創立時に比べると考え方も変化してきている。  従って、私のように長年中国で生活していても、従来の考え方と変わる ところと変わらないところを絶えず検証しなおさないとすぐ年寄りが何を 言っているのだ、この年寄りの言うことは古い持代のことを言っているで、 少しも参考にならないと言うことになります。  私の会社は販売会社ですが、2003年には従業員5人からはじめ、今 は30人の会社となり、そのほか外注及び支援者を含めると33人の会社 になっています。若い人が多く平均年齢は30歳くらいです(私を含めな い)。日本でも同じでしょうが、中国でも若い人の間でも5歳離れるとお 互いが通じ合わないと言われます。しかもこの広い中国では地域差によっ て考え方も大きく異なります。  日本から来られた人が「中国は一口に言ってどんな国?」と聞く人が多 いのですが、その切り口によって説明のしかたが異なるので一概にどのよ うに回答するかは難しく、相手が会社員であるか、学者であるか、政治に 関心を持つ人か、中国で何かをしようとしている人か単なる興味なのかに よって回答の仕方を変えています。  それ故に、従来の聞いている中国、今の若い中国人が話す中国、書物で 読んだ中国を基に中国観を形成し、又その考えだけで業務を進めると、こ んなはずではなかった。あるいは自分に自信が持てなくなったり、どんな ポリシーで業務に当たれば良いか分からなくなったります。  既に出来上がった会社でしか仕事をしたことがない人は苦労をすると思 いますが、先ずは自分が何をしに来たのかを明確にし、(仕事をしに来た などというのは回答になりません)  その為には何をすべきか? これは日本でも中国でも同じです。何もわ からない状態で会社を一から設立するのだという気構えで仕事をする必要 があります。誰かに頼ったり、勝手な思い込みで事を進めると後で大きな 失敗に繋がります。  先ずはすぐそばの人を観察し、政治社会の動きを敏感に感じることが重 要で、自分は全てを知らないことだと言うことで、何にでも興味、関心を 持つことから始め、専門家と言われる人の言うことを鵜呑みにせずに、例 え、任せてもその内容をいちいち確認する努力を惜しまなければ中国に来 て思惑と違ったと感じることは少なくなります。  日本でのマニュアル人間はここでは通用しないと考えることから始めて ください。  勿論先ほど述べた雑多な意見を聞いたり、書物を読んだりすることは無 視できません。間違えても周りの動きに左右されないようにして下さい。 自分の考えを持ち信念を持って行動することが必要です。但し、暴走はい けません。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆◇ Web連載 更新のお知らせ ◇◆ ------------------------------------------------------------------ Webで触れる文学 (次回の更新日は2012年1月15日) http://www.l-gulliver.com/webseries/index.html ------------------------------------------------------------------ ● 円野 越(まどのえつ)新連載『約束』(短編) ・ 著者プロフィール 1948年、福井県で生まれ、大阪で育つ。英知大学(現日本国際大学)文学 部卒業後、ヨーロッパ遊学。1975年帰国、1983年再渡独。 現在はデュセルドルフに居をかまえる。 ------------------------------------------------------------------ ● 支刈誠也(しかりせいや)新連載『もうひとつの甲子園』 「伝説の女優」原節子が、十五の時に出演した、甲子園を目指す旧制中学 の野球部を舞台にした映画「魂(たま)を投げろ」(一九三五年)のフィ ルムが発見されたのをヒントに、戦前、戦後の甲子園の名選手、名勝負を 軸にした謎解き。 ・著者プロフィール 1944年、新潟県長岡市生まれ。 東京大学農学部農芸化学科卒業後、鐘淵化学に就職。 在、ゴールドコースト。 主な著書『黄色い花の咲く丘--山本五十六の謎』『品格のすすめ 笑える ほどおかしな企業人』『ヤマシタ・コード 山下財宝の謎』 ▼インタビューはこちら http://www.l-gulliver.com/interview/03shikari.html ------------------------------------------------------------------ ● 岡 謙二(おかけんじ)新連載『まなつのなっちゃんをさがして』 (連載3回)  夏の暑い日に、ぼくは大好きななっちゃんをさがす旅に出た。大切な人 を想うあなたに贈る、大切なおはなし。 ・著者プロフィール 1950年12月和歌山市生まれ。東京での約20年の生活を経て、現在、神戸在 住。 著書に『輝きの人生へ』(潮出版社)、『不滅のヒーロー 仮面ライダー伝 説』 (ソニーマガジンズ)など。 ブログ「KOBE Diary」 http://wordlights.wordpress.com/ ------------------------------------------------------------------ ● こおり砂糖 新連載『青い渦』(連載3回)  突如の大地震が、主人公の高校生村上知夏を襲った。学校の校庭には、巨 大な裂け目。そこになにか見えると思ったとき、再び、地震が。知夏が目覚 めた時代、そこは江戸時代、安政元年だった。 ・著者プロフィール  愛知県生まれ 高校卒業後、各種学校、専門学校卒。 現在は主婦。 『パパといっしょ』(完結)  売れない作家の、パパとママと娘の物語。悲喜こもごもがリアルに描かれ ている、ユーモアあふれる作品。 12月1日より新連載「青い渦」を開始します。 ------------------------------------------------------------------ ●大登 鶴(おおのぼりつる) 新連載『神さまの恋人』(連載3回)  ある日、突然、神さまに出会った「わたし」は、不思議な神託を受けて、 思ってもみない「過去」の扉が開いた。そこに待ち受けるひとは、「神さ ま」だったか。 『華の乱 小説通天閣』(完結・連載16回)  大阪の下町にある通天閣とビリケンさん。その庶民の生活風景を昭和40年 代初期の時代背景のもとに、情緒豊かに描く、人間愛。 ・著者プロフィール 1948年、山口市出身 高校卒業後、関西の某企業に就職。間もなく、定年退職。 学生の頃に、同人誌に所属、文学を目指した。 ------------------------------------------------------------------ ●都環咲耶子(とわさくやこ) 連載『詩 億千の星くず』 (完結・連載9回) 壮大な宇宙と結ぶ人間社会の、めくるめく幻想と現実に照らした、ロマン とアンロマンの世界。 ・著者プロフィール 1960年東京都新宿区生まれ 高等学校卒業後、山野美容学校を終えて美容師となる。 現在は主婦。 ------------------------------------------------------------------ ●国沢 裕(くにざわゆう)『ぱにっく☆護衛者』2(完結・連載8回)  護衛者シリーズのパート2。 ・著者プロフィール 兵庫県神戸市出身。 武庫川女子大学文学部教育学科初等教育専攻人間関係コース卒業。 日本心理学会認定心理士・レクリエーション指導者資格有。 ------------------------------------------------------------------ ●立川 鈴(たちかわりん)エッセイ『風に乗って』(連載4回お休み)  私の中の不思議なことを、自由な発想で、面白おかしく書く。  読者に届くような、文の流れを目指す。 ・著者プロフィール 1983年、鹿児島県生まれ。 19歳の時に詩を書き出す。 現在も継続して詩に触れる日常を送る。 ------------------------------------------------------------------ ●山田将一(やまだまさかず)詩的ノベル『モダーンズ・ストーリー』 (完結・連載16回)  この物語は、若い芸術家たちのドラマチックな日常と、その友人たちとの 奇想天外な出来事を、洒落たユーモアと淡いペーソスで、独自の『詩的ノ ベル』に綴ったアート感覚あふれる作品。 ・著者プロフィール 1963年 大阪に生まれる。 美術家。詩人。 ------------------------------------------------------------------ ●支刈誠也『シベリア物語 広瀬武夫の愛と死の行方』(完結) 軍神広瀬武夫はロシア人女性の恋人アリアズナと結ばれたのか。 シベリアの過酷な自然と闘いながら愛を育み、生き抜いた日本人の恩讐 を描いた野心作。 ------------------------------------------------------------------ ●柴崎昭雄『たんぽぽ家族』(連載中6回目・しばらくお休みします) 漁師の家に生まれた兄と弟。しかし、18歳を迎えた弟昭雄には悪夢が待っ ていた。それからずいぶんと時間がたつ。晩年、病に倒れた父は病死した。 家族の絆と、その血流に新しい記憶と息吹を求めて、家族のことを書き下 ろした。 ・著者プロフィール 1965年5月15日、青森県に生まれる。 1983年の交通事故による頚髄損傷(両上下肢機能全廃) 以来、車椅子の生活。 1990年頃、ラジオ川柳番組をきっかけに本格的に川柳を始める。  主な著書  第一句集「木馬館」、第二句集「少年地図」、『ゼロの握手』(2008.10 リトル・ガリヴァー社刊)、新詩集『てのひらの月』(2010.9.24) 「てらひらの月」は第33回青森県詩人連盟賞を受賞した。 ▼インタビューページはこちら http://www.l-gulliver.com/interview/11shibasaki.html ------------------------------------------------------------------ ●都環咲耶子(とわさくやこ) 『カナル・グランテに類似する憧憬』(完結) ある夫婦のあいだにある亀裂が、夫の愛人と、妻の愛人としての不思議な 関係へと発展する。誰が本当に、誰を愛するのか。 『片翼のイリス』(連載15回・完結) 本作品は、イスラエルの紛争地域で被弾し、片目となった日本人の軍人と、 治療にあたった日本人医師の好意で、日本の家に居候することになった被 害者と、その医師の医師を目指す高校生の息子との奇妙な関係が広がる。 ------------------------------------------------------------------ ●国沢裕(くにざわゆう)『ぱにっく☆護衛者』(完結) 『君の指先に、僕は鳥をとめてみせよう』(完結) 『魅入る瞳』『光と闇のゲノム』はそれぞれ完結しました。 ------------------------------------------------------------------ ●トーマス青木『黄昏のポジョニ・ウッチャ2』(完結) 東欧ハンガリーの首都ブダペストを舞台にした異色の日記風小説。 第一巻では、ブダペストで始まる新たな生活と出会いの序章。 第二巻では、第八章「ブタペストの夏休み」から再スタート。 現在、第十一章まで「ブタペストのゴリラ」が完結した。 既刊『黄昏のポジョニ・ウッチャ1』(2007.12発売) ▼インタビューページはこちら http://www.l-gulliver.com/interview/02aoki.html ------------------------------------------------------------------ ●篠永哲一(しのながてついち)『おしゃべりな洋服職人』(完結) 四国の名エッセイスト篠永さんが登場。絶妙な語り口とさりげない表現に 著者の感性が光る。新連載は、書き下ろし。  主な著書  詩集「句読点」「ふるさと」「地中の法廷」「にて」  エッセイ「長太郎洋服人生」「洋服職人長太郎」(いずれもリトル・ガリ ヴァー社刊) ▼インタビューページはこちら http://www.l-gulliver.com/interview/24shinonaga.html ------------------------------------------------------------------ ●松本昇「死者のパートナー」(完結) ------------------------------------------------------------------ ●大山真善美(ますみ) 詩集『自転車操業』(完結) 主な著書 「教師になったら読む本」詩集「シンデレラの離婚」「試験に合格する本」 「離婚時代」「学校の裏側」「恋は一億分の一の奇跡」(リトル・ガリヴァ ー社刊、2009.6) ▼インタビューページはこちら http://www.l-gulliver.com/interview/12ooyama.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆◇ 駆け込み寺 (156) ◇◆ ------------------------------------------------------------------  2012年、明けましてあめでとうございます。このコラムも156回を迎え、 これまで無断欠勤なし、皆勤です。  今年もどうぞ、ご愛読のほどをお願いします。もし、わたしの暴走があ りましたら、そのつど、ご指摘いただければ幸いです。  「震災後1年目」という意味では、再起動であり、かつ新プログラムで 臨むとなりますが、この新ものに馴れるまで多少の時間がかかります。た だ、感覚的には、一度「ご破算」になったものを再度、立ち上げていくと いうのは、その心労は倍以上、体力、知力の消耗も半端ではありません。  ただし、このご破算によって、目の前にあるものの見方、価値観が大き く変わるというのも事実なのです。  これまで、当たり前であったものが当たり前でなくなり、これまで無視 し、素通りしていたものが愛しいものに化ける、その一瞬がご破算なので す。    わたしは、ある時期から文学系の雑誌、月刊誌をほとんど目にしなくな りました。これはある文学的妄想があって、その一部に「月刊誌を読む」 という無意識の条件を課していた。が、それを毎月読み続けることによっ て、「どうなる」と考えたとき、なにも変化がなく、かつ自らの肥やしに もなっていないと気付いた。無駄というには、追いかけていたものがある ので、いいきれないが、その決断後、「困った」という感覚はない。  しかし、さらにいうと、再び、文学との再会に巡り合った。  きっかけは、「芥川賞」「直木賞」の作家たちの作品は、どんなものが あるのだろう、どんな質のものだろうかという期待が生まれたからである。  いってみれば、別の意味の宿題になる。それを手にし、読み込まれたと き、読み手は、「理解できるか」「評することができるか」という宿題で ある。  かつての文学的妄想はなく、その中味を知りたいという願望がそのよう な行動に走らせたのである。  正直に書くと、驚きも落胆もなかった。これから世に出てくる作家の皆 さんのスタートをじっと見ている自分を意識した。これからこの人たちは どうなるのだろう、期待と不安というわけではないが、見守りたいという 気持ちが生まれた。  読書は、好きな人のものを読めばいいという考え方がある。当然、それ が読書歴の偏向に繋がるが、わたしは、その偏向を避けて、新しいものへ の興味の範囲を大きく広げた。その結果、いかに「知らない世界」がそこ にあるかも知った。「好き嫌い」で仕切りきれない世界がそこにある。そ れを知っただけでも、わたしは幸福者だと思う。  2012年、ここにもきっと新しい出会いがある。いまから気持ちはわくわ くしている。 ▼関連サイト「四天王寺小説道場」 http://blogs.yahoo.co.jp/tontoniboy ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆◇ 今週のおすすめ 新刊案内 ◇◆ ------------------------------------------------------------------ ◎2012年度新刊予定◎ ●篠永哲一著「おしゃべりな洋服職人」 ●万彩タモン著「ノサバリズム2」 ●リトル・ガリヴァー社編集部「あなたの知らない葬式の話」(仮) ●支刈誠也著「シベリア物語」広瀬武夫の愛と死 ●畑島喜久生著・三部作  第2部「銃後少年の哀しき戦後つれづれ」  第3部「わが人生の不覚について」  第3部付録「ある専門学校における定員確保奮闘記」 ●畑島喜久生著「東日本大震災詩集 日本人の力を信じる」 ------------------------------------------------------------------ ●山田博泰著『人生読本 死ぬまで生きたれ!!』 四六判・236頁、並製本、売価1600円、11年12月10日発売 大阪を拠点とする西栄寺の山田住職は、波乱の人生の中で、お寺を建立し た。その辛苦を知るゆえに、他人の苦労も自分の苦労のように受け止めた。 人生は苦労の積み重ねであるから、楽ではない。しかし、住職はつねに 「へこたれるな」とエールを送っている。 こんかいはそのエキスの一部を著作としてまとめた。 http://www.amazon.co.jp/dp/4903970620/ (amazonリンクページ) ▼ インタビューページはこちら http://www.l-gulliver.com/interview/30yamada.html ------------------------------------------------------------------ ●宇田川森和著『ビィーナスの涙』 四六判・316頁、上製本、予価1500円、2012年1月発売予定 画家の父がパリで客死。残された兄妹は、不遇な青春を送る。 やがて、兄・宗高は、絵筆をとり、画家として再出発する。その最初のモ デルに買って出たのは妹・榛名であった。眩しい肢体の向こうに、血をわ けた兄妹を越えた「何か」が迫っていた。 ------------------------------------------------------------------ ●菅原勇太著 小説『BBB』 四六判・246頁・売価1600円・11年11月30日発売 ロックバンド「B-DASH」を結成し、メジャーデビューしたグループのボー カル&ギターおよび作詞作曲を担当。「GONGON」の愛称で親しまれる。デ ビューアルバム「FREEDOM」はいきなりチャート1位を獲得した。 小説「BBB」は書き下ろし作品で、ロックの世界でのパラレルワールドを 描く。純愛小説のようで、リアルなサスペンスの匂いを放つ異色の一作。 http://www.amazon.co.jp/dp/4903970590/ (amazonリンクページ) ▼ インタビューページはこちら http://www.l-gulliver.com/interview/29sugahara.html ------------------------------------------------------------------ ●畑島喜久生著 4部作の第一部『「大日本青少年団」への道』 四六判・165頁・予価1300円・11年12月発売予定 詩人であり、教育評論家として多数の著作を手がけてきた同氏のライフワー クともいうべき、自伝4部作の第1弾。対馬の孤島に生を受けた畑島少年 の、島での生活と、教育者の第一歩を踏む「師範学校」時代、その最中で の、長崎での原子爆弾被曝。凄惨な1ページが幕を開けた。 ▼ インタビューページはこちら http://www.l-gulliver.com/interview/08hatajima.html ------------------------------------------------------------------ ●米村貴裕著『ビースト・コード201X』 A6新書判・220頁・予価950円・2012年1月発売予定 2007年に発売された『ビースト・コード』のリメイク版が発行される。 ビースト・シリーズのトップとして、高校生雷貴と知子のラブロマンスを 軸に、人間の眠れる遺伝子の「発現」によるビースト変身の異次元を創出 した。 リメイク版はさらにパワーアップし、カバー・挿絵ともに新バージョンで 登場する。 ------------------------------------------------------------------ ●浜野伸二郎詩集『魔法の愛』 A5判・270頁・売価1900円・11年7月28日発売 詩集『恕のこころ』を2006年に刊行し、区切りの12冊の詩集を刊行。重度 の障害にもかかわらず、20代で結婚、最愛の妻を得た。創作とボランティア など、多くの活動を通じて障害者の生活改善に取り組んできた。 そして、詩作は12冊目に。2007年以降、現在まで書き続けてきた作品を収 録する。 http://www.amazon.co.jp/dp/490397054X/ (amazonリンクページ) ▼インタビューページはこちら http://www.l-gulliver.com/interview/15hamano.html ------------------------------------------------------------------ ●緋野晴子著『沙羅と明日香の夏』 四六判・260頁・売価1400円・11年6月25日発売  二人の女子高校生が迎えた、田舎の夏での短い日々。中学生だったころの 二人は、学校生活を遠ざけていた。学内のいじめや誹謗・中傷に傷つけら れた彼女たちにとって、その「夏」は特別なものだった。新しい出会いと 発見の中で、彼女たちの絆は強く結ばれ、力強さを取り戻すのであった。 「沙羅と明日香の夏」が、東愛知新聞社主催の第21回「ちぎり文学賞奨励 賞」を受賞しました。 http://www.amazon.co.jp/dp/4903970612/ (amazonリンクページ) ▼ インタビューページはこちら http://www.l-gulliver.com/interview/28hino.html ------------------------------------------------------------------ ●米村貴裕著『ビースト・スケール』 新書判・250頁・予価1000円・2012年4月予定 ビースト・シリーズ第8弾。 人間社会とビースト社会のパラレルワールド。人間社会を支配しようとす る「悪意」とそれを守ろうとする「善意」の中から、並行宇宙の運命が決 する。植物学者のルリヤと、人間と意志疎通を図るドラゴン・シェリナの 行動がすべてを「決める」。 ミッションの失敗はすなわち”死”を意味する。 ダイナミックな科学と奇跡的なファンタジーが入り乱れる怒涛のストーリー 今、開幕。 ▼インタビューページはこちら http://www.l-gulliver.com/interview/04yonemura.html http://www.l-gulliver.com/interview/21yonemura.html ------------------------------------------------------------------ ●畑島喜久生著『いま日本の教育を考えるX』 四六判・300頁・売価2100円・11年3月18日発売 『いま日本の教育を考える』シリーズは今回で、5冊目。長崎で教壇に立ち、 40年以上、現場の教師として活躍し、実践家として評価を高めた。他方、 現代の日本の教育は改革につぐ、改革を断行するが、大きな成果を上げた とはいいがたい。蔓延する「いじめ」、教員の不祥事、教育方針の変更な ど、子どもたちを取り巻く環境は、ますます混迷の度を深めた。 その問題点をえぐる、最新のシリーズ5。 全シリーズ、日本図書館協会選定図書。 http://www.amazon.co.jp/dp/4903970523/ (amazonリンクページ) ------------------------------------------------------------------ ●石黒敏明著『イチロー君、大学で何を体験した?』 A5判・186頁・売価1500円・11年3月2日発売 神奈川大学・外国語学部英語英文学科教授石黒敏明氏のエッセイ。英語学 の指導・教授はすでに39年を経過し、その間、著書に『米国留学紀行』 (2005.1 リトル・ガリヴァー社刊)、論文は、「言語習得」、「言語喪 失」、「言語使用域(レジスター)」などの専門書が多い。 http://www.amazon.co.jp/dp/4903970515/ (amazonリンクページ) ▼インタビューはこちら http://www.l-gulliver.com/interview/27ishiguro.html ------------------------------------------------------------------ ●西内敏夫著 歌集『海の揺り籠』 A5判・260頁・ソフトカバー・売価1800円・11年2月15日発売 歌人西内敏夫の歌集&随筆集。歌人団体「かりん」叢書235号。 今年75歳を迎える著者は、現役の船乗り。しかし、若いときの事故により、 右足切断。以後、片足人生の始まりであった。そんな中、人生を左右する さまざまな出会いと別れがある。かれはいわゆる「もてる男」であった。 その理由もあった。しかし、それらの奇縁を大切にし、生涯守り続けてき た、「男の主義」もある。後半の随筆では、それらの人生の機微にふれ、 人としての道を問いかけている。 http://www.amazon.co.jp/dp/4903970531/ (amazonリンクページ) ------------------------------------------------------------------ ●米村貴裕著『ビースト・レシーバー』 B6新書判・250頁・売価1000円・11年2月10日発売 ビーストシリーズ第7弾。新作は太古に栄えた恐竜の遺伝子情報を継ぐ、 主人公たちの変身”機獣”物語。人類と恐竜がペアになる化石は発掘され、 実は”あのとき”恐竜たちは滅亡していなかった――。謎めく電磁波の到 来で「ディノサウロイド」は復興のノロシとして動き出し、何も知らない 人類へ牙をむく。しかし究極の恋が事態を変え、未知なる領域へ全世界は 挑むことになる。 http://www.amazon.co.jp/dp/4903970477/ (amazonリンクページ) 既刊『ビースト・コード』(07.4) 『ダイヤモンド・ビースト』(08.6) 『レシピエント・ビースト』(09.2) 『ウルティメイト・ビースト』(09.2) 『ビースト・シフト』(09.9) 『ビースト・オブジェクター』(10.2) ------------------------------------------------------------------ ▼新刊情報はこちら http://www.l-gulliver.com/book/newbooks.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆◇ 編集後記 ◇◆ ------------------------------------------------------------------ 編集長の龍田龍人です。 謹賀新年。……と思いきや、今年は暦の関係で仕事初めが早い方もおられ るのではないでしょうか。お正月も元旦、2日と初売りで関係者の方は大 忙し。のんびりと「お正月」気分を味わう雰囲気が、お店も開いているの で薄らいできているように感じます。いつもと違うのは年賀状とテレビの 特番くらいでしょうか。 ともあれ竜の年、上昇機運に乗って新年もどうぞよろしくお願いいたしま す。 ▼ご意見、ご感想などはこちらのメールアドレスまでお願いします。 gmm@l-gulliver.com ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼配信先変更、配信停止の手続きは、こちらからお願いします。 http://www.l-gulliver.com/ ※本メールマガジンに掲載された情報を許可なく転載することを禁じます。 ※本メールマガジンにより生じる損害などについて、弊社は一切責任を負 いません。 ------------------------------------------------------------------ ※本メールマガジンは、等幅フォントで作成しています。罫線や枠内のデ ザインがずれて見える場合は、お使いのメールソフトのフォント設定を等 幅フォント(Windows:MSゴシック、Mac:Osaka等幅など)に設定してご 覧ください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ガリヴァーの森 発行者 株式会社リトル・ガリヴァー社 代表取締役 富樫庸 編集者 株式会社リトル・ガリヴァー社 龍田龍人 公式サイト http://www.l-gulliver.com/ メール gmm@l-gulliver.com メルマガ・バックナンバー http://www.l-gulliver.com/gmm-archive/index.html 登録、解除はこちら http://www.l-gulliver.com/ (c)2010-2011 Little Gulliver Sya All rights reserved. ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━