━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ガリヴァーの森      第155号 (2011/12/29)           総合出版 リトル・ガリヴァー社            http://www.l-gulliver.com/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆◇Contents◇◆================================================== ●社長・富樫庸よりご挨拶 ●市源小次郎の岡目八目 ●福堀武彦の「日本人から見た中国諸事情」 ●Web連載 更新のお知らせ ●駆け込み寺 (155) ●今週のおすすめ 新刊案内 ●編集後記 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆◇ 社長・富樫庸よりご挨拶 ◇◆ ------------------------------------------------------------------ あと3日。2011年もいよいよ終わり。新年2012年がどんな年になるのか、 誰も分かっていない。期待と不安があるが、比率としては期待のほうを押 す。なぜならば、2011年に大きなウミは出たと思うから。鬼籍に入った世 界のワルたち、寿命が切れたということは、地球にとって幸福なことだ。 2011年、本当にお世話になりました。改めてお礼申し上げます。 どうぞ、よいお年をお迎え下さいますように。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆◇ 市源小次郎の岡目八目 ◇◆ ------------------------------------------------------------------ 23日に公開された映画「聯合艦隊長官 山本五十六」は好評のようだ。 手元に旭日旗のついた帝国海軍の電報用紙2枚のコピーがある。 コピーにコピーを重ねたもののようで、判読できない箇所が多いが、1枚 には、「軍極秘」「暗号」「緊急用」のスタンプと「聯合艦隊、GF長官」 の書き込みがあり、本文には「聯合艦隊伝令第十三号 興国の荒廃繋リテ 此ノ聖戦ニ在リ。粉骨砕身各員其ノ任ヲ全ウセヨ。本電、十二月七日  0600 発令(号、国は旧漢字)」とある。 もう1枚には、「艦橋届出済」のスタンプと「赤城」の書き込み、「奇襲 成功セリ。暗号略号、ト(・・−・・)ラ(・・・)・ト・ラ・ト・ラ」 とある。 前者は、絶対非戦を唱えていた山本五十六が、自分の主張と運命の乖離を 覚悟したときのもの、後者は、それが現実のものとなったときのものだ。 映画のコピーに「誰よりも開戦に反対した男がいた」とあるように、対米 開戦は日本の破滅への道だと熟知していた山本五十六は、天皇の避戦の聖 断を、最後の最後まで期待しており、12月2日、聯合艦隊旗艦「長門」 から機動部隊に向け、「新高山登レ一二〇八(真珠湾攻撃命令の暗号)」 を発信した後も、「筑波山晴レ(機動部隊帰還命令の暗号)」を発信する 準備をしていた。 米歴史家、ジョージ・ナッシュ氏は、新たに公開されたフーバー第31代 米大統領のメモなどを基に著した「FREEDOM BETRAYED (裏切られた自由)」で、フーバー元大統領は、戦後、日本で行われたマッ カーサーとの会談で、フランクリン・ルーズベルトを「対ドイツ参戦の口 実として、日本を対米戦争に追い込む陰謀を図った“狂気の男”」と批判 し、昭和16年の在米日本資産の凍結や石油輸出禁止など一連の経済制裁 は、「対独戦に参戦するために、日本を破滅的な戦争に引きずり込もうと したものだ」と言い、マッカーサーは、それに答え、「ルーズベルトは、 41年夏に日本側が模索していた近衛文麿首相との日米首脳会談を行い、 戦争回避の努力をすべきだった」と批判していたという。 弊社既刊の「黄色い花の咲く丘・・・山本五十六の謎」では、山本五十六、 本人に、「米内(光政、海軍大臣、当時)さんが、剣難の相があるとの理 由で、俺を後任の海軍大臣に指名せずに、暗殺の危険がない海の上に(聯 合艦隊長官として)出してくれたのは、軍人としては名誉なことだったが、 国を思う個人としては、海軍大臣になり日独伊三国同盟の阻止と対米避戦 に身体を張りたかった」と言わせている。 アメリカをよく知っていた山本五十六が、もし、海軍大臣になっていたら ・・・歴史のIFは、物書きの想像力をかき立てる。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆◇福堀武彦の「日本人から見た中国諸事情」41回 ◇◆ ------------------------------------------------------------------  私はたまたま少し中国語がわかったので、自分の会社の採用事情はよく わかっていた。日本語ができる人が現地社員と比べて地位の高い人は少な い。会社の設立時には日本語より実務を優先して社員を採用した為である。 私もそろそろ現役離脱の年を迎えた。サラリーマンは終わりどころである。  後任は中国語を自由に操れ、しかもある程度、日本の会社で部下を使っ て管理部門をこなし、かつ会計が分かる人を希望しているが残念ながら、 そのような人材は意外と少ない。  なので、新人社員は日本語ができる人を中心に採用し始めた。しかしど うしてだか分からないが、社内では日本からの出張者を交えた会話以外の 時は日本語を話すことが少ない。私が最終的には中国語で話した方が、意 思が早く、良く伝わるので中国語で話してしまう為である。  現地社員に対しては日本語のレベルの維持と幅広い教養を身につけるよ うに、自己研鑽、自己啓発を奨めている。会社の金は使わない。日本語が できなければ本当の幹部になれないと、あるていどの地位になった場合に 伝えるようにしている。  なぜなら日本人を含む重要な会議であなたの為だけに「通訳はつけられ ない」と明言しているからである。それはこの会社が日本の100%資本 の会社であり、日本から来る幹部とは日本語で話すからである。それなら ば、社員は日常から日本語を話す努力をしそうなものだが、日常の仕事の 中では、やはり中国語の方が彼らにとって便利な為か結局は中国語になっ てしまう。長期にいる日本人も自然と中国語が上手くなる。  ただ仕事を離れたときには結構日本語で話しかけてくる。その場合は私 も日本語で対応するように心がけている。 (私の本心は中国語が英語と同じように日本人に話せるようになって欲し いと願っている。又本社にもそのように要望している。要望を聞き入れな られない時には本社の幹部に、これからは「中国の時代」だからと絶対に 私の前では言わせないようにしている)  さて話は変わるが、これまでに「向上心」という言葉を時々使うことが あったが、「向上心」とは何か、広辞苑を見てみると「より優れた状態を 目指そうとする心」とある。この説明によれば、「向上心」は誰でも持っ ている心と思う。  その人の置かれた状態によりその目指すものがそれぞれ異なるというこ とである。  では、「より優れた」とはどんなことか。私の理解では、現状より自分 の生活が改善することである。それは、即ち金と地位及び本人が、居心地 が良いと思う生活と人生である。  中国ではそこに個人の面子も含まれる(即ち面子が保てるということ)。  会社で言えば、それが実現できる環境に自分が置かれているか、そして おかれていると思うことが大事である。その基礎の上で現在よりそれぞれ が向上するという目標があること。即ち「向上心」がある社員がいるとい うことは社員がそこにいれば向上できるという気持ちになれる会社である ということである。  それがなければ、社員はその会社にいる必要がなくなる。会社を移ると 言うことである。 「向上心」のない社員がいるということはその会社が衰退に向かうという ことである。「向上心」がなく、かつその会社にいるということは、自分 の主張が受け入れられず、自分なりの努力もむくわれず改善されない。既 に会社には期待もしていないが、もしそこを去れば、現在の状況よりもさ らに悪化するとわかっている場合である。 「向上心」がある人が誰もいないということはその会社は早晩つぶれると いうことであり、全てがその社員の責任とは言えない。日本人を含む幹部 がそのようにしたのであり、幹部たちの責任である。  従って、個々人の社員に向上心がないとは言えない。ただ会社から見て の向上心がないと言っているに過ぎない。しかし本当に「向上心」がない のだろうか? 結局は幹部が今より良くなるという目標を立てていないか、 与えられないからでなかろうか。  その社員にとっての「向上心と」は何か。その人が既に会社の中で見つ けられないと思えばやめてもらって結構。中国では社員の途中退職を恐れ る必要はまったくない。日本みたいに無理やり雇用確保のためだけで雇用 する必要がないのだ。考えようによっては気が楽ではないか。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆◇ Web連載 更新のお知らせ ◇◆ ------------------------------------------------------------------ Webで触れる文学 (次回の更新日は2012年1月1日) http://www.l-gulliver.com/webseries/index.html ------------------------------------------------------------------ ● 円野 越(まどのえつ)新連載『約束』(短編) ・ 著者プロフィール 1948年、福井県で生まれ、大阪で育つ。英和大学文学部卒業後、ヨー ロッパ遊学。50年帰国、58年再渡独。 現在はデュセルドルフに居をかまえる。 ------------------------------------------------------------------ ● 支刈誠也(しかりせいや)新連載『もうひとつの甲子園』 「伝説の女優」原節子が、十五の時に出演した、甲子園を目指す旧制中学 の野球部を舞台にした映画「魂(たま)を投げろ」(一九三五年)のフィ ルムが発見されたのをヒントに、戦前、戦後の甲子園の名選手、名勝負を 軸にした謎解き。 ・著者プロフィール 1944年、新潟県長岡市生まれ。 東京大学農学部農芸化学科卒業後、鐘淵化学に就職。 在、ゴールドコースト。 主な著書『黄色い花の咲く丘--山本五十六の謎』『品格のすすめ 笑える ほどおかしな企業人』『ヤマシタ・コード 山下財宝の謎』 ▼インタビューはこちら http://www.l-gulliver.com/interview/03shikari.html ------------------------------------------------------------------ ● 岡 謙二(おかけんじ)新連載『まなつのなっちゃんをさがして』 (連載2回)  夏の暑い日に、ぼくは大好きななっちゃんをさがす旅に出た。大切な人 を想うあなたに贈る、大切なおはなし。 ・著者プロフィール 1950年12月和歌山市生まれ。東京での約20年の生活を経て、現在、神戸在 住。 著書に『輝きの人生へ』(潮出版社)、『不滅のヒーロー 仮面ライダー伝 説』 (ソニーマガジンズ)など。 ブログ「KOBE Diary」 http://wordlights.wordpress.com/ ------------------------------------------------------------------ ● こおり砂糖 新連載『青い渦』(連載2回)  突如の大地震が、主人公の高校生村上知夏を襲った。学校の校庭には、巨 大な裂け目。そこになにか見えると思ったとき、再び、地震が。知夏が目覚 めた時代、そこは江戸時代、安政元年だった。 ・著者プロフィール  愛知県生まれ 高校卒業後、各種学校、専門学校卒。 現在は主婦。 『パパといっしょ』(完結)  売れない作家の、パパとママと娘の物語。悲喜こもごもがリアルに描かれ ている、ユーモアあふれる作品。 12月1日より新連載「青い渦」を開始します。 ------------------------------------------------------------------ ●大登 鶴(おおのぼりつる) 新連載『神さまの恋人』(連載2回)  ある日、突然、神さまに出会った「わたし」は、不思議な神託を受けて、 思ってもみない「過去」の扉が開いた。そこに待ち受けるひとは、「神さ ま」だったか。 『華の乱 小説通天閣』(完結・連載16回)  大阪の下町にある通天閣とビリケンさん。その庶民の生活風景を昭和40年 代初期の時代背景のもとに、情緒豊かに描く、人間愛。 ・著者プロフィール 1948年、山口市出身 高校卒業後、関西の某企業に就職。間もなく、定年退職。 学生の頃に、同人誌に所属、文学を目指した。 ------------------------------------------------------------------ ●都環咲耶子(とわさくやこ) 連載『詩 億千の星くず』 (完結・連載9回) 壮大な宇宙と結ぶ人間社会の、めくるめく幻想と現実に照らした、ロマン とアンロマンの世界。 ・著者プロフィール 1960年東京都新宿区生まれ 高等学校卒業後、山野美容学校を終えて美容師となる。 現在は主婦。 ------------------------------------------------------------------ ●国沢 裕(くにざわゆう)『ぱにっく☆護衛者』2(完結・連載8回)  護衛者シリーズのパート2。 ・著者プロフィール 兵庫県神戸市出身。 武庫川女子大学文学部教育学科初等教育専攻人間関係コース卒業。 日本心理学会認定心理士・レクリエーション指導者資格有。 ------------------------------------------------------------------ ●立川 鈴(たちかわりん)エッセイ『風に乗って』(連載4回お休み)  私の中の不思議なことを、自由な発想で、面白おかしく書く。  読者に届くような、文の流れを目指す。 ・著者プロフィール 1983年、鹿児島県生まれ。 19歳の時に詩を書き出す。 現在も継続して詩に触れる日常を送る。 ------------------------------------------------------------------ ●山田将一(やまだまさかず)詩的ノベル『モダーンズ・ストーリー』 (完結・連載16回)  この物語は、若い芸術家たちのドラマチックな日常と、その友人たちとの 奇想天外な出来事を、洒落たユーモアと淡いペーソスで、独自の『詩的ノ ベル』に綴ったアート感覚あふれる作品。 ・著者プロフィール 1963年 大阪に生まれる。 美術家。詩人。 ------------------------------------------------------------------ ●支刈誠也『シベリア物語 広瀬武夫の愛と死の行方』(完結) 軍神広瀬武夫はロシア人女性の恋人アリアズナと結ばれたのか。 シベリアの過酷な自然と闘いながら愛を育み、生き抜いた日本人の恩讐 を描いた野心作。 ------------------------------------------------------------------ ●柴崎昭雄『たんぽぽ家族』(連載中6回目・しばらくお休みします) 漁師の家に生まれた兄と弟。しかし、18歳を迎えた弟昭雄には悪夢が待っ ていた。それからずいぶんと時間がたつ。晩年、病に倒れた父は病死した。 家族の絆と、その血流に新しい記憶と息吹を求めて、家族のことを書き下 ろした。 ・著者プロフィール 1965年5月15日、青森県に生まれる。 1983年の交通事故による頚髄損傷(両上下肢機能全廃) 以来、車椅子の生活。 1990年頃、ラジオ川柳番組をきっかけに本格的に川柳を始める。  主な著書  第一句集「木馬館」、第二句集「少年地図」、『ゼロの握手』(2008.10 リトル・ガリヴァー社刊)、新詩集『てのひらの月』(2010.9.24) 「てらひらの月」は第33回青森県詩人連盟賞を受賞した。 ▼インタビューページはこちら http://www.l-gulliver.com/interview/11shibasaki.html ------------------------------------------------------------------ ●都環咲耶子(とわさくやこ) 『カナル・グランテに類似する憧憬』(完結) ある夫婦のあいだにある亀裂が、夫の愛人と、妻の愛人としての不思議な 関係へと発展する。誰が本当に、誰を愛するのか。 『片翼のイリス』(連載15回・完結) 本作品は、イスラエルの紛争地域で被弾し、片目となった日本人の軍人と、 治療にあたった日本人医師の好意で、日本の家に居候することになった被 害者と、その医師の医師を目指す高校生の息子との奇妙な関係が広がる。 ------------------------------------------------------------------ ●国沢裕(くにざわゆう)『ぱにっく☆護衛者』(完結) 『君の指先に、僕は鳥をとめてみせよう』(完結) 『魅入る瞳』『光と闇のゲノム』はそれぞれ完結しました。 ------------------------------------------------------------------ ●トーマス青木『黄昏のポジョニ・ウッチャ2』(完結) 東欧ハンガリーの首都ブダペストを舞台にした異色の日記風小説。 第一巻では、ブダペストで始まる新たな生活と出会いの序章。 第二巻では、第八章「ブタペストの夏休み」から再スタート。 現在、第十一章まで「ブタペストのゴリラ」が完結した。 既刊『黄昏のポジョニ・ウッチャ1』(2007.12発売) ▼インタビューページはこちら http://www.l-gulliver.com/interview/02aoki.html ------------------------------------------------------------------ ●篠永哲一(しのながてついち)『おしゃべりな洋服職人』(完結) 四国の名エッセイスト篠永さんが登場。絶妙な語り口とさりげない表現に 著者の感性が光る。新連載は、書き下ろし。  主な著書  詩集「句読点」「ふるさと」「地中の法廷」「にて」  エッセイ「長太郎洋服人生」「洋服職人長太郎」(いずれもリトル・ガリ ヴァー社刊) ▼インタビューページはこちら http://www.l-gulliver.com/interview/24shinonaga.html ------------------------------------------------------------------ ●松本昇「死者のパートナー」(完結) ------------------------------------------------------------------ ●大山真善美(ますみ) 詩集『自転車操業』(完結) 主な著書 「教師になったら読む本」詩集「シンデレラの離婚」「試験に合格する本」 「離婚時代」「学校の裏側」「恋は一億分の一の奇跡」(リトル・ガリヴァ ー社刊、2009.6) ▼インタビューページはこちら http://www.l-gulliver.com/interview/12ooyama.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆◇ 駆け込み寺 (155) ◇◆ ------------------------------------------------------------------ 「危機管理」の重要性はいまさら書くまでもないが、かつてその危機を感 じさせる事件、事故が起きていないと、これからも「危機はない」と錯覚 するか、誤認する。  かつての阪神・淡路の大震災の前に、こんなうわさがあった。「関西は 地震がない」「安心だ」という過信。それゆえ、あの大地震の前に、なす すべもなかったが、現実に起きてみると、人智をこえた悲惨な結果が待っ ていた。  それを救ったのは、数多くのボランティアであった。ボランティアとい うことばのもつ多様性はともかく、昔の隣組の発想である。  そして、ことしの「3.11」の東日本大震災でも、隣組のお返しとばかり、 関西からの支援の輪が広がった。  福島原発の事故調査委員会の発表を聞いて、ああやっぱりそうだったか の思いもあるが、すべからく原発素人、責任は下請けに押しつけ、という 責任転嫁の構図が露骨に見えた。検査員が逃げ隠れしたという現実は、笑っ てしまうほどの喜劇である。  ふたたび「危機管理」。これから、自然災害という猛威がいつ、どこの 地域で襲われるかという、確定事項はなにもない。それこそ、予期せぬと きの突発事故として発生しうる。  それに対する、準備、備えは大丈夫なのか。  だが、阪神・淡路も、東日本大地震も、備えは無意味という感慨が広が る。つまり、その規模、パワーは、「想定外」というか、人的ガードがほ ぼ無価値で、ほとんど機能していなかった、ということである。  ただし、昔の人達の伝言は生きていた。たとえば、漁船は、津波襲来の 前に沖に逃げた。いち早く高台に逃げた人たちもいた。つまり、逃げる人 たちの危機意識にも差があって、目の前の危機に順応、反応できる人と、 過信する人と、茫然自失の人と、そして最後は覚悟した人とがいたという ことである。 「危機管理」の向こうに、死を恐れず、人命救助に力を尽くした人たちも いた。ただ、これはマニュアルがそうさせたのではなく、「人を助ける」 という素朴な、本能的所作だったということである。  隣組も所作は、損得の問題ではなく、人間関係の問題である。  今年は、期せずして、「絆」という言葉が選ばれた。家族の絆だけでな く、隣の絆、地域の絆、その絆によって、人間社会の再生が始まったばか りである。  1000年に一度の災害に、人間がどう立ち向かうかを試されている。 ▼関連サイト「四天王寺小説道場」 http://blogs.yahoo.co.jp/tontoniboy ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆◇ 今週のおすすめ 新刊案内 ◇◆ ------------------------------------------------------------------ ◎2012年度新刊予定◎ ●篠永哲一著「おしゃべりな洋服職人」 ●万彩タモン著「ノサバリズム2」 ●リトル・ガリヴァー社編集部「あなたの知らない葬式の話」(仮) ●支刈誠也著「シベリア物語」広瀬武夫の愛と死 ●畑島喜久生著・三部作  第2部「銃後少年の哀しき戦後つれづれ」  第3部「わが人生の不覚について」  第3部付録「ある専門学校における定員確保奮闘記」 ●畑島喜久生著「東日本大震災詩集 日本人の力を信じる」 ------------------------------------------------------------------ ●山田博泰著『人生読本 死ぬまで生きたれ!!』 四六判・236頁、並製本、売価1600円、11年12月10日発売 大阪を拠点とする西栄寺の山田住職は、波乱の人生の中で、お寺を建立し た。その辛苦を知るゆえに、他人の苦労も自分の苦労のように受け止めた。 人生は苦労の積み重ねであるから、楽ではない。しかし、住職はつねに 「へこたれるな」とエールを送っている。 こんかいはそのエキスの一部を著作としてまとめた。 http://www.amazon.co.jp/dp/4903970620/ (amazonリンクページ) ▼ インタビューページはこちら http://www.l-gulliver.com/interview/30yamada.html ------------------------------------------------------------------ ●宇田川森和著『ビィーナスの涙』 四六判・316頁、上製本、予価1500円、2012年1月発売予定 画家の父がパリで客死。残された兄妹は、不遇な青春を送る。 やがて、兄・宗高は、絵筆をとり、画家として再出発する。その最初のモ デルに買って出たのは妹・榛名であった。眩しい肢体の向こうに、血をわ けた兄妹を越えた「何か」が迫っていた。 ------------------------------------------------------------------ ●菅原勇太著 小説『BBB』 四六判・246頁・売価1600円・11年11月30日発売 ロックバンド「B-DASH」を結成し、メジャーデビューしたグループのボー カル&ギターおよび作詞作曲を担当。「GONGON」の愛称で親しまれる。デ ビューアルバム「FREEDOM」はいきなりチャート1位を獲得した。 小説「BBB」は書き下ろし作品で、ロックの世界でのパラレルワールドを 描く。純愛小説のようで、リアルなサスペンスの匂いを放つ異色の一作。 http://www.amazon.co.jp/dp/4903970590/ (amazonリンクページ) ▼ インタビューページはこちら http://www.l-gulliver.com/interview/29sugahara.html ------------------------------------------------------------------ ●畑島喜久生著 4部作の第一部『「大日本青少年団」への道』 四六判・165頁・予価1300円・11年12月発売予定 詩人であり、教育評論家として多数の著作を手がけてきた同氏のライフワー クともいうべき、自伝4部作の第1弾。対馬の孤島に生を受けた畑島少年 の、島での生活と、教育者の第一歩を踏む「師範学校」時代、その最中で の、長崎での原子爆弾被曝。凄惨な1ページが幕を開けた。 ▼ インタビューページはこちら http://www.l-gulliver.com/interview/08hatajima.html ------------------------------------------------------------------ ●米村貴裕著『ビースト・コード201X』 A6新書判・220頁・予価950円・2012年1月発売予定 2007年に発売された『ビースト・コード』のリメイク版が発行される。 ビースト・シリーズのトップとして、高校生雷貴と知子のラブロマンスを 軸に、人間の眠れる遺伝子の「発現」によるビースト変身の異次元を創出 した。 リメイク版はさらにパワーアップし、カバー・挿絵ともに新バージョンで 登場する。 ------------------------------------------------------------------ ●浜野伸二郎詩集『魔法の愛』 A5判・270頁・売価1900円・11年7月28日発売 詩集『恕のこころ』を2006年に刊行し、区切りの12冊の詩集を刊行。重度 の障害にもかかわらず、20代で結婚、最愛の妻を得た。創作とボランティア など、多くの活動を通じて障害者の生活改善に取り組んできた。 そして、詩作は12冊目に。2007年以降、現在まで書き続けてきた作品を収 録する。 http://www.amazon.co.jp/dp/490397054X/ (amazonリンクページ) ▼インタビューページはこちら http://www.l-gulliver.com/interview/15hamano.html ------------------------------------------------------------------ ●緋野晴子著『沙羅と明日香の夏』 四六判・260頁・売価1400円・11年6月25日発売  二人の女子高校生が迎えた、田舎の夏での短い日々。中学生だったころの 二人は、学校生活を遠ざけていた。学内のいじめや誹謗・中傷に傷つけら れた彼女たちにとって、その「夏」は特別なものだった。新しい出会いと 発見の中で、彼女たちの絆は強く結ばれ、力強さを取り戻すのであった。 「沙羅と明日香の夏」が、東愛知新聞社主催の第21回「ちぎり文学賞奨励 賞」を受賞しました。 http://www.amazon.co.jp/dp/4903970612/ (amazonリンクページ) ▼ インタビューページはこちら http://www.l-gulliver.com/interview/28hino.html ------------------------------------------------------------------ ●米村貴裕著『ビースト・スケール』 新書判・250頁・予価1000円・2012年4月予定 ビースト・シリーズ第8弾。 人間社会とビースト社会のパラレルワールド。人間社会を支配しようとす る「悪意」とそれを守ろうとする「善意」の中から、並行宇宙の運命が決 する。植物学者のルリヤと、人間と意志疎通を図るドラゴン・シェリナの 行動がすべてを「決める」。 ミッションの失敗はすなわち”死”を意味する。 ダイナミックな科学と奇跡的なファンタジーが入り乱れる怒涛のストーリー 今、開幕。 ▼インタビューページはこちら http://www.l-gulliver.com/interview/04yonemura.html http://www.l-gulliver.com/interview/21yonemura.html ------------------------------------------------------------------ ●畑島喜久生著『いま日本の教育を考えるX』 四六判・300頁・売価2100円・11年3月18日発売 『いま日本の教育を考える』シリーズは今回で、5冊目。長崎で教壇に立ち、 40年以上、現場の教師として活躍し、実践家として評価を高めた。他方、 現代の日本の教育は改革につぐ、改革を断行するが、大きな成果を上げた とはいいがたい。蔓延する「いじめ」、教員の不祥事、教育方針の変更な ど、子どもたちを取り巻く環境は、ますます混迷の度を深めた。 その問題点をえぐる、最新のシリーズ5。 全シリーズ、日本図書館協会選定図書。 http://www.amazon.co.jp/dp/4903970523/ (amazonリンクページ) ------------------------------------------------------------------ ●石黒敏明著『イチロー君、大学で何を体験した?』 A5判・186頁・売価1500円・11年3月2日発売 神奈川大学・外国語学部英語英文学科教授石黒敏明氏のエッセイ。英語学 の指導・教授はすでに39年を経過し、その間、著書に『米国留学紀行』 (2005.1 リトル・ガリヴァー社刊)、論文は、「言語習得」、「言語喪 失」、「言語使用域(レジスター)」などの専門書が多い。 http://www.amazon.co.jp/dp/4903970515/ (amazonリンクページ) ▼インタビューはこちら http://www.l-gulliver.com/interview/27ishiguro.html ------------------------------------------------------------------ ●西内敏夫著 歌集『海の揺り籠』 A5判・260頁・ソフトカバー・売価1800円・11年2月15日発売 歌人西内敏夫の歌集&随筆集。歌人団体「かりん」叢書235号。 今年75歳を迎える著者は、現役の船乗り。しかし、若いときの事故により、 右足切断。以後、片足人生の始まりであった。そんな中、人生を左右する さまざまな出会いと別れがある。かれはいわゆる「もてる男」であった。 その理由もあった。しかし、それらの奇縁を大切にし、生涯守り続けてき た、「男の主義」もある。後半の随筆では、それらの人生の機微にふれ、 人としての道を問いかけている。 http://www.amazon.co.jp/dp/4903970531/ (amazonリンクページ) ------------------------------------------------------------------ ●米村貴裕著『ビースト・レシーバー』 B6新書判・250頁・売価1000円・11年2月10日発売 ビーストシリーズ第7弾。新作は太古に栄えた恐竜の遺伝子情報を継ぐ、 主人公たちの変身”機獣”物語。人類と恐竜がペアになる化石は発掘され、 実は”あのとき”恐竜たちは滅亡していなかった――。謎めく電磁波の到 来で「ディノサウロイド」は復興のノロシとして動き出し、何も知らない 人類へ牙をむく。しかし究極の恋が事態を変え、未知なる領域へ全世界は 挑むことになる。 http://www.amazon.co.jp/dp/4903970477/ (amazonリンクページ) 既刊『ビースト・コード』(07.4) 『ダイヤモンド・ビースト』(08.6) 『レシピエント・ビースト』(09.2) 『ウルティメイト・ビースト』(09.2) 『ビースト・シフト』(09.9) 『ビースト・オブジェクター』(10.2) ------------------------------------------------------------------ ▼新刊情報はこちら http://www.l-gulliver.com/book/newbooks.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆◇ 編集後記 ◇◆ ------------------------------------------------------------------ 編集長の龍田龍人です。 今年もあと数日。今年、最後のメルマガです。今年はいろいろなことがあ り、考えさせられる年でしたが、新年は平安な年になることを祈っていま す。なにが起きても年月は淡々と進んでいきます。メルマガもつづきます ので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 ▼ご意見、ご感想などはこちらのメールアドレスまでお願いします。 gmm@l-gulliver.com ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼配信先変更、配信停止の手続きは、こちらからお願いします。 http://www.l-gulliver.com/ ※本メールマガジンに掲載された情報を許可なく転載することを禁じます。 ※本メールマガジンにより生じる損害などについて、弊社は一切責任を負 いません。 ------------------------------------------------------------------ ※本メールマガジンは、等幅フォントで作成しています。罫線や枠内のデ ザインがずれて見える場合は、お使いのメールソフトのフォント設定を等 幅フォント(Windows:MSゴシック、Mac:Osaka等幅など)に設定してご 覧ください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ガリヴァーの森 発行者 株式会社リトル・ガリヴァー社 代表取締役 富樫庸 編集者 株式会社リトル・ガリヴァー社 龍田龍人 公式サイト http://www.l-gulliver.com/ メール gmm@l-gulliver.com メルマガ・バックナンバー http://www.l-gulliver.com/gmm-archive/index.html 登録、解除はこちら http://www.l-gulliver.com/ (c)2010-2011 Little Gulliver Sya All rights reserved. ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━