いよいよ今月、コミック「ビースト・コード」の発売となりました。
著者米村貴裕さん、リトル・ガリヴァー社にとっても初の試みとなります。
ついては、記念すべきコミック版を祝して、絵師の秋田恵微を招き、著者との対談を催しました。
(司会進行 リトル・ガリヴァー社編集長・佐田 満)


佐田満(以下:司会)
ではよろしくお願いします。司会は、リトル・ガリヴァー社編集長の佐田満です。
本日は、発売一月前に迫った、コミック版「ビースト・コード」を記念し、おふたりに集まりいただきました。
最初に、コミック版を仕上げた秋田恵微さんの感想を、お聞きします。
大変ご苦労されたと思いますが。


秋田恵微(以下:秋田)
そうですね。まず小説一冊をまるっとマンガにするのは初めてでしたので要領を掴むのが大変でした。ページ数制限もありましたし、エピソードごとの割り振り・構成するのが一番苦労しましたね。小説の内容からして、せめて倍のページ数があればコマ的にも余裕があったかも……。実際予定よりちょっとはみだしました。(笑)


米村貴裕(以下:米村)
わたしももう少し長く読みたかったです!
内容の関係であるキャラをまるっと削除は仕方なかったのですが、理性の人(ビースト)という意味合いがあったので……。おっと。語りだすと、とまらないのでおしまい。


秋田
私はもっと描きたかったキャラですが、仕方ないですね〜。特に変身後が。彼女のファンも多そうですよね。


米村
ムジナってビーストなのでしょうか?


秋田
いいんじゃないですか、ビーストで。そこは広い心で理解してもらって(笑)


司会
原作者として、米村貴裕さんは見守っていたと思いましたが、コミック画像ができあがるにつれて、こいつは、期待できるぞ、と思っていましたか。


米村
ミリオンセラーは確実だなと思ってました(笑)。とにかく「うわ、小説と同じセリフ、しゃべってるよ!」とか当たり前のことにも、ひとつひとつジーンと胸に来てました。そこに秋田さんのアレンジが加わり、「新作」をみているようでした。小説では設定や背景をズラズラ書くと、ダレてしまうので想像力にたくすところが大きかったので。


秋田
ミリオンの期待…嬉しいですが、氷山背負うくらいのプレッシャーが肩に……どっと。(汗)
でも仰るように、米村さんの小説は背景の描写より心理描写やビーストバトルが見所だと思います。


司会
「ビースト・コード」は、ライトノベルとして、2007年に発行しています。じつは、このノベルズが、米村作品のビーストノベルズの、第1号だったのです。 当時の米村さんは、これを送り出した心境は。


米村
五里霧中で無我夢中でした。
元々、『はてしない物語』、映画「ネバーエンディング・ストーリー」に触発されまして、いつかは竜と人の物語をと考え、なんとか世に送り出そうと必死でした。自分だけの「ネバーエンディング・ストーリー」を作るんだと。そして超えるんだと。
ところがどっこい、まだまだ「ネバ」くらい(?)までしか到達できてません。


司会
となると、それは「序章」。「ネバーエンディング」で行くと、まだまだ後半ありますよ。となると、「ビースト・コード」1・2・3・4・5〜ぐらいまでかな。
まさか、10年後、ノベルズが、コミックになるなんて、予想していましたか。


米村
ハリウッド実写化のオファーがまだないので困ってます。と冗談ですがコミック化のハードルは高いので、予想すらできていませんでした。
で、秋田さんのマンガ「ガーディアン・ビースト」を過去に読んでいて「いつかお仕事ご一緒できたらなぁ」なんて高根の花を夢みていたら、実現してしまいました。うれしすぎます。人生ってつくづく予想不能です。


秋田
ハリウッドは夢見るだけならタダですけど〜(笑)
ですが、私も今回のお話を頂いた時はびっくりでした。正直有名絵師でもないし。人間、どこにどんな縁が転がっているか分からないものです。縁と夢は大事にするものですね。


司会
秋田さんにお聞きしますが、当時の「ビースト・コード」を読まれましたか。
そして、どんな感想を持たれたのですか。


秋田
すみません。当時のものは読んでいません(汗)実は他の本を読んでたりしますが……。内緒(笑)。
リメイク版とどう違うのかちょっと分かりませんが、とにかく竜獣いっぱいで、それぞれが生き生きと描かれており、また人間っぽいところに惹かれました。ゲームに出てくるような感情の無い敵キャラとかと違って。


米村
ありがとうございます! 他の本……反響が「うーん」だった作品じゃなければいいんですが……。
個人的に竜獣を、ただの乗り物や道具としてとしか、あつかわない物はわたしは好きじゃありません。どうしてもビースト寄りの書き方になってしまいます。もしかしたら、わたしにも『ビースト・コード』の主人公のように??


秋田
私も、主人公をフォローするだけのビーストより同等に活躍するのが好きですね。むしろ人間の方が脇役とか。(笑)


司会
それで、ノベルズから、コミック化の絵師として秋田さんは了承された。トライしてみてどうでしたか。


秋田
科学的な考証など除くとほぼ私のワールドに近い物でしたので描きやすかったです。正直後半はビーストまみれでノリノリでした。(笑)こんなに好きな竜獣を沢山描かせて頂けるなんて本望です!
こんな原作他に無いですからね。


米村
いやいやいやいや、ま、まぁ確かに文章は置いておいてビーストの数だけなら、相当ですよね。いくら好きでも描くのは、やはりとんでもなくたいへんだったと思います。
それにとあるドラゴン主人公格のゲームキャラに似て非なるキャラまで、まぎれこんでますし。見抜けたら粗品謹呈!?


秋田
ねぎらい有り難うございます。
粗品……直筆イラスト色紙とか出しましょうか。 まあ、欲しい人いないか(笑)


米村
わたしが欲しいです!


司会
著者の米村さんは、1本の作品をかなりのハイペースで書かれている。
今回で、17冊ですから、ノベルズ「ビースト・コード」から、10年間での成果として、著者は、どうですか。歴代のビースト・ノベルズへの思い入れは。


米村
もちろん『ビースト・コード』がナンバー1です! 原点ですから。恩師の先生に「SF(サイエンス・フィクション)ノベルだよ」と言われました直近の『ビースト・ブレイン』も個人的に。
家にあるフィギュアが「私を書いて」と念を飛ばしてきた「ビースト・メカニズム」、あっ、新作のこと、まだオフレコですか? これも異様です。
作品すべてに思い入れがあり、選ばせるなんて酷です。ただホラー要素の高い『レシピエント・ビースト』はちょっと……なんですが、これがじつによく売れたような。


秋田
おお、私はホラーも好物ですのでそういうのも沢山書いてほしいです、とこそっと要望しておこうかな(笑)


米村
で、ではいずれ、ゾンビドラゴンやスケルトンドラゴンばっかりのお話をばひとつ。抱きしめたらスプラッタしちゃう?
驚かす系のホラーより怖~いシナリオ系のホラーには、機会があれば挑戦してみたいですね。


秋田
本当ですか! ゾンビドラゴン、いいですねえ〜! ホラーは大好きなので超期待してます!! USJに特許出願!!(願)


司会
これまで、ライトノベルしか刊行していない出版社として、コミック版に手を出すというのは、相当の覚悟がいりました。
果たして、コミックの読者が存在するか、これまでのノベルズの読者が、コミックを読まれるか、そんな不安というか、心配がありました。
著者の米村さんとして、そのあたりの気持ちは。


米村
秋田さんのおかげでコミックス版はみているだけで、カッコいいですし幸せな気持ちになれます。不安や心配……は、自信のないものは世に送り出しません。ですが証人喚問のように「証拠は?」「明確な根拠は?」とたずねられると、「ビーストのご加護があります」のようなアブナイ発言になってしまいます。


司会
秋田さんは、コミック通の絵師ですから、コミック業界の特性とか、独特の流れというか、ノベルズにない「違い」があると思います。どのあたりに注意し、注目しておれば、いいですか。


秋田
あくまで個人的な意見ですが、まずマンガは言うまでもなく絵とストーリーで成り立っています。小説はビジュアルが無いのでその部分は読者の想像任せになり、その分それをかき立てるだけの文章力が必要です。マンガは最初もちろん絵が目に飛び込む訳ですから、そこでまず「これはどんなストーリーなんだろう?」と興味を持たせることがポイントになります。で、読み進めることでストーリーの渦に引き込んでいく。逆に言えば、どんなに絵が素晴らしくても話がつまらなければマンガはダメかと思います。いや、作画担当の逃げじゃないですけど。(笑)
私自身、ストーリーマンガを描くのでそこは実感しています。


米村
あくまでストーリー、なんですよね。作品が活きてくるか死んじゃうか。文章も書きだしの3行で読むか捨てるか決められるといいますが、これはマンガでも似た点があるかと思います。ですが、それについては何の心配もありませんでした。自画自賛ではなくイラストと適度なストーリーアレンジをもってしてです。


司会
ノベルズの常識が、コミックの常識として通用するのかどうか。
たとえば、初版は、どのくらいの販売部数を見込んだらいいのか。ほぼ、前が見えない状態でスタートしています。むろん、願望として、たくさん売りたい。できれば、増販し、一万部にあげたいという目標を立てています。
これって、どうですか。秋田さんの感触としてはどうですか。


秋田
正直ちょっと分かりません(汗)
雑誌連載からの単行本と違っていきなりの書き下しとなると一般に認知されるまでが大変ですし。もちろん作画担当の私自身の責任もありますが、例え良いものでも売るということは容易ではありませんからただ頑張るしかないですね。またいきなりのヒットというのはかなり高いハードルなので、ある程度時間も必要ではないでしょうか。じわじわ人気が出るという作品もありますし。それと、潜在的なビーストファンをどう発掘するかもネックになってくるのではと。マイナー支持層は馬鹿に出来ませんので狙い目かも。


司会
著者としては、どうですか。実現性は。


米村
言霊というものを信じて発言します。全世界に一万部じゃ足りません。せめて一億部は欲しいところですね。って、ただのほら吹き著者みたいですが「ハリー・ポッター」も「エラゴン」もスタートは自費出版1000部程度なんです。実現性は「ビースト・コード」、真エンディングをみてご判断ください。営業トークでした。


司会
今回のビースト・コミックまつりに当たって、絵師秋田恵微さんとして、これだけはいっておきたいというメッセージはありますか。


秋田
原作が訴えている「全ての生き物バンザイ!」が私の絵で皆様にうまく伝えられたらいいなと思います。原作の細やかな心理描写をマンガで表現しきれているか、そのあたりも見てもらえたら嬉しいです。2人分のビースト愛を合わせて…、ってまるで「ビースト・コード」に出てくる必殺技!?(笑)


米村
アレ、ですね。


司会
米村さんにも同様の質問です。


米村
この文章からではなく、作品にこめたメッセージを受けとってください。今の世界で失われつつある大切なものです。クリエーターは、わたしもその端くれですが、みんな、作品からくみとってって、願っているのではないでしょうか? もし「わからない」だったら作者サイドが悪い!


司会
コミック版のスタートは、いわば、「はじまり」です。
今後、どうしたいか、いやどうすべきかという視点から、秋田さんに具体的に目的・目標ってありますか。


秋田
今回は大変ながらも楽しいお仕事でした。もし今後も機会があれば是非米村さんの原作をマンガにしたいです。キャラもとても魅力的だしストーリーも好きです。ただ、読者の皆様が「米村さんの話に絵が合わない!」って思われたら諦めます。その際には原作を活かせる他の良いパートナーを見つけて、コミカライズの道を閉ざさないようにしてもらえれば。
私自身は「次はもっと良いものにしよう!」と常に思っています。


米村
いやいやいやいや! 絵が合うと思い、かつ人もビーストも描けるマンガ家さんとしてお願いしているので、それはありませーん。


秋田
有り難うございます!お言葉、漫画家冥利につきます。


司会
米村さんは、すでに18作目「ビースト・メカニズム」を仕込まれている。
さらに、19作目、20作目につなげていくのだろうと思いますが、それらの新作はどんな物語になりそうですか。


米村
 作品を書くときは、いつも天からお話が降ってきてスタートとなるので正直、わかりません。「いたこ」状態で書いているんですよー。
それに毎回、これで有終の美を飾るんだと考えていますので、先のことはわかりません。ただお話が出てくるとすれば、どうあっても竜獣が関わってくると思います。あとSF。俗にいう「売れ筋」はわたしには書けそうにありません。


秋田
世に媚びるようなものばかり作っても幸せにはなりませんけどね。なるべく多くの人に「好き」を共有してもらえるのなら理想かなと思います。


司会
大いに新作を期待しております。
また、秋田さんもよい仕事をされることをお願いしておきます。


米村
珍作にならないように気をつけたいです。「ビースト・コード」のひとつ前に作品を拝見していただいたのですが、リトル・ガリヴァー社さまに「これは作文だ!」ってズバッと、まぁ討ち死にしていまして。覚えておられるでしょうか?
そんな珍作や駄作にならないようにします。ありがとうございました。


秋田
珍作? それはそれで見てみたいような。(笑)
このたびはこのような場を設けて頂き有り難うございました。とても楽しかったです。米村さんのこれからの新作も楽しみです!


(2017年3月25日 収録)


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